さまざまな事情があって離婚をしようとする人に、必ず訪れるのが「修羅場」です。離婚する方としては、円満に離婚したいと思うのですが、なかなかそうは問屋が卸しません。なぜでしょうか。
相手からすれば、結婚生活というのは、いろいろな事情があるにせよ、継続することが当たり前です。昨日も続いたように明日も同じように続くことを前提に、毎日の生活は、繰り広げられるのが通常です。
当然結婚している人にとっては、夫婦仲がどうであっても、多少なりとも問題を抱えた家庭であったとしても、明日も夫婦関係が継続されることが前提です。明日も明後日も、来月も再来月も、来年も再来年も20年先も、基本的には婚姻生活が継続するものとして、今日を生きている人がほとんどなのです。
なぜなら、一緒に人生を歩んでいく約束が結婚だからです。
結婚も離婚も合意が必要
結婚は、お互いの合意がないとできません。お互いに「相手を夫として、妻として認め、婚姻することに合意」してはじめて、一組の夫婦ができあがります。
- あなたは、「美しいなぁ、かわいいなぁと思うあの子」と勝手に結婚できません。
- あなたは、「優しいジェントルマンだなぁと感じる紳士」と一方的に結婚できません。
あまりにも、当たり前ですよね。(笑)
結婚は、相手と交わす契約関係なので、必ず相手の合意が必要となるわけです。
離婚も合意が必須
これと同じように、離婚も、あなたが「したい」と思ったからといって、勝手にできるものではありません。相手の合意があってはじめて離婚は成立します。
つまり、仮にあなたが離婚したいと思ったとしても、相手が離婚したくないと思えば、勝手に離婚することはできないことになります。同様に、相手が離婚したいと言っても、あなたが離婚したくないといえば、勝手には離婚はできません。
お互いが離婚することに合意しなければ、離婚はできないということになります。
離婚の4つのパターン
正確に言えば、離婚には次の4つの方法があります。(このうち審判離婚というのは、調停が不可能な場合にのみ家庭裁判所によって離婚が成立するもので、非常にレアなので、実質は3パターンになります。)
- 協議離婚
- 調停離婚
- 審判離婚
- 裁判離婚
このうち日本における離婚のほとんどが、協議離婚です。協議離婚というのは、夫婦が話し合って、離婚すると決めて、裁判所や公正証書などの決めごとなく、「ただ夫婦が離婚届にサインすることでお互いに合意して」成立する離婚になります。
調停離婚と裁判離婚
調停離婚は、裁判所の調停員に仲裁してもらって離婚協議をする方法になります。また、裁判離婚は調停が成立しないときにのみ、実施されることになります。裁判離婚は、次の5つの理由のうちのどれかがないとできません。
- 相手が浮気や不倫などの不貞行為をしている場合
- 相手が家出したり、あなたを追い出したり、家にお金を入れないなど悪意の遺棄
- 相手が3年以上生死が不明な場合
- 相手が強度の精神病の場合
- 結婚を継続することができない重大な問題がある場合
つまり、仮にあなたが離婚したいと思っても、相手が離婚を拒否して調停でも納得せず、裁判になったとしても、上記の事由がなければ、あなたは相手と離婚できないことになります。逆に、相手があなたに離婚を要求しているとしても、上記の5つの事由のいずれもなければ、相手はあなたと離婚することはできません。
なぜ離婚は修羅場を作るか
離婚が修羅場を作る理由は、次の4つに分類できます。
- 夫か妻のどちらかが離婚に合意していない
- 離婚に合意しているけれど、財産分与に合意されない
- 親権をどちらが持つかについて合意がされない
- さまざまな背景を元に生じる損害賠償等に合意がされない
簡単に言うと、お互いに何かしら合意できない理由があるから、お互いに争いあって、修羅場ができることになります。また、結婚する時と違って、お互いに離れるという選択をするわけなので、お互いに利害関係が生まれて人間関係がこじれ、合意を得にくくなります。。
また、そもそもお互いに受け入れられない点があるから離婚するわけなので、対立した場合、その対立がお互いの譲歩によって歩み寄るのが難しいことになります。なので、離婚は修羅場になりやすのです。
離婚がより大きな修羅場と化す事由
さらに、離婚の背景に、不倫やDV(ドメスティックバイオレンス・家庭内暴力)があった場合などは、感情的な要素も出てくる上に、単なる財産の分与だけでなく補償という要素も出てくるので、修羅場をより激しくする要因のひとつになります。
このように、何かしらの合意が得られないことが、離婚する際の修羅場を作ることになります。さらに、詳しく項目毎に見てみます。
離婚することの合意が得られない
まず、一番目に考えられるのが、そもそも離婚に合意を得られないことで、修羅場が出来る可能性があります。あなたが離婚したいからといって、相手も離婚したいと思っているとは限りません。
確かに、あなたが夫婦関係に辟易しているのなら、相手も決して、家庭環境や夫婦関係に満足いってはいないと思います。しかし、結婚は単なる交際と違って、生活もかかっています。
そうなると、例えば、お金のことや子供の養育のことで、仮に家庭環境や夫婦関係に満足いっていなくても、「相手は離婚したくない」ということもあります。
また、先にもまとめました通り、結婚を継続できない合理的な理由がなければ、裁判などの強制的な力を使っても、離婚することはできません。
あるいは、あなたがひそかに不倫をしていて、相手にバレていない場合などは、「離婚する意味を相手が理解できないため」合意を得られにくくなります。
この合意の得られにくさとそもそもの人間関係の悪さは、修羅場になる可能性があります。
共有したものの分配の合意
離婚するというのは、ひとつの家庭を分解することです。
結婚ということが、完全に異なる環境で生まれ育った他人同士である男女が、ひとつの家庭を持つという契約です。夫は妻に人生の責任を負い、妻は夫の人生に責任を負う。それが、結婚というものです。
従って、結婚することによって、夫婦は、お互いのさまざまな物や事を共有するようになります。お金はもちろんですが、不動産や車、家財などのさまざまなものが共有財産になりますし、子供だって、夫婦で連帯で責任を負うことになります。
離婚するということは、結婚することによって「共有したもの」を、夫と妻のそれぞれに分配することになります。お金も家も、車も家具も家電も思い出の写真も、すべてのものが「夫か妻のどちらかのもの」になるか「処分されるか」のいずれかになります。「共有のままにしておく」という選択はできなくなります。
さらに、子供も一緒に育てることができなくなり、夫か妻かどちらかが親権を持って、子供を育てつつ、「面会交流」をする権利を相手方の親と子供が持つことになります。
つまり、いろいろなものを共有しているのに、それを分配しなければならないために、いろいろな事情と思惑があって、もめる原因を作るということができ、修羅場が生まれるということになります。
損害賠償に関する合意が得られない
次に挙げられるのが、単に財産や親権を分配するだけでなく、さらにそれ以上のものを相手から補償してもらおうという場合です。これは、例えば、離婚の理由が不倫や浮気などの不貞行為があった場合や家庭内暴力などの被害に遭った場合に発生するものです。
損害賠償などの補償が認められるのには、一定の基準はあるので、裁判で確定すれば問題なく争う余地がなくなります。しかし基本的には裁判に至るまでに話し合いをすることになり、不倫の認否も含めて感情を絡めて話し合いをすることがどうしても必要になります。
従って、大きな修羅場を作る要因となります。
修羅場を回避して離婚する方法
では、どうしたら修羅場をなく、離婚することができるのでしょうか。
まず、これまでの話を統括して検討して頂くとわかると思いますが、修羅場が生まれるのはお互いに「合意」がなされないからです。
なので、あなたが離婚したいと思っている場合は、「相手の言い分を全て受け入れること」で修羅場をなく離婚することができます。
あなたと相手の間で合意が得られない場合は、「その点」を争うことが必要になるので、修羅場を避けられません。
従って、相手もあなたと同様に「離婚したい」と思っていないのであれば、修羅場なく離婚することは不可能、ということができます。
離婚に合意している場合
次に、相手が離婚には合意している場合は、離婚する以外のことを、相手の希望通りにあなたが受け入れることで、修羅場を完全に回避することができます。分配しなくてはいけないすべてのことを相手が希望する通りに分配すればそれで済むことになります。
なので、簡単にまとめるとこうです。
- 相手が離婚に合意しない場合は、修羅場は回避できない
- 相手が離婚に合意している場合は、すべての分配を相手の希望通りにすることで修羅場を回避できる
ただし、すべてのものの分配を相手の希望通りにしようとすると、離婚後のあなたの生活が困難になる可能性があります。例えば、「あなたの月給が30万円なのに、養育費で20万円支払う」などということは不可能です。なので、相当の余裕がない限り、多少なりとも財産の分配や養育費の交渉等が必要になる可能性が高いです。
離婚する際の修羅場を回避することは不可能ではないが、なかなか難しい
以上のことを統合的に考えると、基本的に離婚というライフイベントは、非常に大変で、エネルギーが必要になることを覚悟することが必要です。
そして、夫婦それぞれの人生がかかっているだけに、お互いの人生が非常に強い影響を受けます。なので、離婚の交渉においては、大きな負荷がかかり、修羅場が出来てしまう可能性は極めて高いということができます。
それを回避するためには、あらゆる相手方の要求を受け入れる力を持つことが必要になるとうことができます。
なので、基本的には、離婚を決意したのであれば、スムースでスマートな円満な離婚をしようとするよりも、修羅場のドロドロした交渉を乗り越える決意で、離婚交渉に臨むことが必要になると思います。
以上が、一度、離婚した私(周りのたくさんの離婚経験を見聞きした内容を踏まえて)からのアドバイスとなります。
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