お金がない家庭の子が大学進学する時奨学金を借りない方が良い?

学金を返済できなくて破産してしまう人が年間1万人以上いるというデータがあるらしいです。さらに連帯保証人になっている親まで巻き添えを食って連鎖破産する問題にまでなっているとのこと。

少し前のNHKのクローズアップ現代で取り上げられて、いろいろと論議を呼びました。私は、Twitterでいろいろな意見があるのを見聞きして、思うところがあったのでブログの記事としたいと思います。

奨学金にまつわるさまざまな意見

奨学金に関するさまざまな意見

さまざまな意見の中には、「勉強するためにどうして借金をしないといけないのか」とか、「子供が社会人としてスタートする際に借金背負った状態なのはおかしい」とか、「そこまでして学んだのに稼げない社会がいけない」とか、いろいろな意見がありました。

それらのいろいろな意見を踏まえて、お伝えしたいと思います。

私は奨学生でした

秋山慎也画像

私は、奨学生でした。父がタクシーの運転手をしていて母が専業主婦という貧しい家庭で育ち、高校進学した時には、両親が離婚して母子家庭になっていました。

高校は、本土の進学校に通いました。公立でしたが、寮に入って、授業料は免除してもらい、毎月19,000円の奨学金をもらっていました。寮は朝と夕とご飯が出たので、19,000円で昼飯と生活費を工面していました。

大学生になると国立大学に入り、入学金と授業料を免除してもらい、毎月47,000円の奨学金をもらいながら生活しました。寮生活をしながら、バイトでお金を貯めて一人暮らしをして、親から仕送りなく生活できたのは、のちの自信となりました。

300万近く借りて2万円弱の返済

高校生から大学生までの7年間で2,940,000円の奨学金を借りて、今、毎月14,410円ずつ返済しています(あと少しの予定です)。返済期間は、180ヶ月だったのですが、途中で経済的に厳しくなった際に、返済を2年ほど猶予してもらった過去があります。

ただ、いずれにせよ、私の奨学金の返済に対する毎月の負担額は、たった14,410円です。また、万が一生活に窮した際などは、返済猶予を申請することができます。

奨学金のおかげで今がある

私は、奨学金を頂いたおかげで、高校・大学と進学してまともに生活することができました。正直、高校・大学で日々の生活は大変でしたが、その時のおかげで今があります。なので、奨学金には非常に感謝しています。

もし仮に、奨学金がなかったとしたら、高校は進学校に行けなかったでしょうし、生活の目処が立たずに大学にはいけなかった可能性があります。

そう考えると今の私があるのは奨学金があるおかげといってよいと思います。

私が借りた奨学金の種類

私が借りた奨学金は、おそらく最もポピュラーな日本育英会の第一種奨学金です。私の大学の友達で、これまた母子家庭に育った子は、第一種奨学金に加えて第二種奨学金ももらっていました。

第一種は無利息ですが、第二種は有利子だったと思います。有利子とはいっても、おそらくものすごく低金利だとは思います。

学費は今も最低現に抑えられる

Twitterの意見でもあったように、「大学が無料であれば奨学金を受けなくて済む」のかというと、私の場合はそもそも「高校も大学は無料で卒業さえてもらった」のであまり関係ありません。奨学金は、生活資金として使っていましたので、大学の授業料とは別問題となります。

国立大学の場合、親の所得が一定以下の場合は、授業料が減免される措置があります。

私の母は、所得が低かったので、入学料まで免除してもらいましたが、授業料だけの減免であれば、そんなに基準は低くないので、かなりの割合で減免してもらえると思います。高校は公立でしたが、これも同様だったように思います。

奨学金破産は、奨学金の問題??

それって奨学金の問題?

話は戻って、奨学金を返済できなくて破産したという話についてですが、これは、本当に奨学金制度が原因で起こったことでしょうか。

確かに、親は連帯保証人になりますので、子が支払いができなければ、一括請求を求められるでしょう。そもそも子供に奨学金を借りさせざるを得ない家庭なわけなので、当然豊かとは言えないと思います。そうなると一括返済はできないのはわかりきったことなので、当然育英会なども、分割支払いの提案をするでしょう。

私の例で行くと、奨学金として300万円借りて、毎月15,000円返済すること、そして返済が厳しい時には、返済猶予措置を講じてもらいました。

これらのちゃんとした支払い猶予制度などが整っているにもかかわらず、毎月1~3万円の支払いができなくて自己破産してしまうのは、逆にいかがなものかと思います。

破産は何のためにしたのか

子供自身もそうですが、それを連帯保証した親も同様です。何か手立てはなかったのでしょうか。あるいは、破産したほうが楽だから、破産したのでしょうか。

これはむしろ奨学金の問題というよりは、教育制度、教育の内容の問題だと思います。300万円の借金と聞くと確かに多いと思いますが、肝心のは返済資金で、私の場合で15,000円、もっと多いとしてもせいぜい30,000円とかそこらだと思います。

しかも、奨学金は返済しないといけないものであることは、そもそも借りるときからわかっていたことです。

以上のような背景があるにも関わらず、奨学金の返済ができなくて破産したとか、親が連鎖破産した、とか被害者的に思うのは少し的外れだと思います。

社会が厳しいのは当たり前

社会が厳しいのは当たり前

NHKで放送されたクローズアップ現代の概要を読むと、「大学を中途退学したら借金しか残らない」とか、「卒業しても奨学金を返せるような職につける保証はない」などの話もありますが、そんなのは当たり前だと思います。

むしろ、奨学金をもらっているのに中退するのは百歩譲って仕方ないにしても、「借金しか残らない」と被害者みたいな捉え方をするのは、どんなものでしょうか。

どれだけの報酬をもらえる仕事に就くかは、奨学金の問題ではなくて、「仕事に対する考え方」の問題であり、教育の問題です。奨学金をもらっていようといまいと、関係ありません。

奨学金は素晴らしい制度

奨学金制度は、すばらしい制度です。お金がない人も学ぶ機会を得ることができます。お金がない環境を打破するためのきっかけを身につけるチャンスを得る機会をもらえます。

でも、残念ですが、今の日本の教育では、「人生のこと」や「お金のこと」、「仕事のこと」を学ぶ機会はありません。大学は、学術研究機関であり、教育機関ではありますが、職業訓練所ではなく実経済やお金を学ぶところではありません。学術機関なので、実社会ではあまり役立たないことのほうが多いわけです。

ですが、私は現在の大学も、それはそれで意義があると思っています。見識や経験を積むことができるし、社会人として独立するまでの猶予期間として、成長する期間として役立つからです。また、実生活で直接的には役立たなくても、バックグラウンドの知識としてストックされる学びがあると思います。

対策は教えてはもらえない

ただ繰り返しになりますが、残念ながら大学では、お金や仕事、人生そのもの、社会活動について学ぶことができません。

だから、奨学金破産が出てしまうのだと思います。

たった毎月1~3万円くらいのお金も返すことができないくらいの経済力しか養えないんだと思います。問題に対する対処法を学べないから、問題解決能力が育たないんだと思います。そして、残念ながら、親も同様だということです。

※金欠など貧しい時の具体的な解決策については、お金がない人の対処法をご参照ください。

奨学金問題の解決方法は???

奨学金問題の解決方法

じゃあ、どうすればこの奨学金破産問題を解決できるのか?というところになると思います。

私は、やはり、個人がもっと主体的に責任を持って生活できるようになることが必要だと思います。

それは、「借りたものは返すのが当たり前」「お金が足らなかったらちゃんと収入を増やせるように努力すること」「万が一返せなくて自己破産したとしても、それを人のせいにしないこと」だということです。

正直、最悪奨学金を返せなくて自己破産してしまったとしても、それを何かのせいにしたり、奨学金の被害者みたいに考えないことが重要だということです。

もっとも大切なこと

要するに、大切なのは、自分の意思であり、責任感です。自分がどう生きたいかということであり、そのために何をどう活用するかということです。

奨学金のせいで自己破産するのではありません。

自分が奨学金を返すだけの収入を得られないから自己破産するのです。

満足いく収入を得られないのは、大学を中退したせいでも、不景気だのせいでも、社会のせいでもありません。満足いく収入を得るための方法を知らないから、満足いく収入を得られないのです。

非常にシンプルでわかりやすいと思います。

奨学金のせいで、自己破産

ではなくて、

収入が低いから、あるいは収支のコントロールができないから自己破産

の話なのです。

奨学金への感謝と共に

そもそも奨学金ほど低金利で返済条件がすばらしい借り入れ制度はありません。学生が勉強するためには、お金がかかるんです。それを親が出せなければ、誰かに借りないといけないんです。

学ぶ機会があるから、貧乏でも貧乏を脱出するために学ぶことができるようになります。主体性を身につけるチャンスを得ることができます。学ぶ自由を行使することができます。

私の一面的な経験談でしかないかもしれませんが、奨学金へ心から感謝している者として、奨学金の制度が悪いわけではないということを書かせて頂きました。