任意整理と個人民事再生で借金が減額される仕組み

借金減額の仕組み
務整理をすると債務を減らすことができます。つまり、借金を減額することができることになります。自己破産では基本的にはすべての借金を0にすることができます。

 

一方で、個人民事再生では大体5分の1くらいに減額することができ、任意整理は減額幅はもっと低くなります。ここでは、個人民事再生と任意整理では、どういう仕組みで借金がどれくらい減額になるか詳しく解説しました。

 

個人民事再生(個人再生)とはどんなもの?

個人民事再生ってどんなもの?
個人民事再生(個人再生)とは、2001年以降の比較的新しい債務整理方法(借金の減額の仕組み)の一つで、現在は自己破産・任意整理と並んで、知られるようになってきました。

 

自営業者でも利用可能な「小規模個人再生」と、会社員や公務員などが利用対象の「給与所得者等再生」との2種が存在しますが、一般的には小規模個人再生が使われるケースが多いです。感覚的には、自己破産と任意整理との中間的な位置付けの借金の減額の仕組みである、と理解しておけば間違いありません。

 

具体的に説明すると、継続もしくは反復して収入(給与収入や店の売上など)を期待できる個人(法人ではない)が、所有する財産(ローン支払い中の住宅、ローン支払済みの自動車などを含む)を処分することなしに、借金の支払い責任(借金額)を減額してもらう裁判上の手続きが個人民事再生です。我が国の倒産処理制度の一つであり、民事再生法13章の規定に則った借金を減額する仕組みとなります。

 

この個人民事再生では、実際に提出した再生計画が裁判所から認められると、原則として借金の総額は5分の1程度(借金総額や所有財産で異なってくる)の金額に免責(減額)されます。この減額された借金総額を3年間(特別な事情が認められれば5年間)かけて分割返済する仕組みです。

 

個人民事再生の条件

 

ただし、個人民事再生の仕組みを利用するために提出する再生計画は、裁判所から無条件に認められる訳ではありません。

 

  1. 破産に準じる切迫した経済状態であること
  2. 住宅ローンを除いた借金の総額が5000万円以下であること
  3. 減額後の借金残高を返済可能な安定した収入が見込めること(収入から支出を差し引いて、少なくとも3万円程度は毎月余剰がある状態)

 

これら3つの条件は最低限満たしておく必要があるのです。

 

なお、個人民事再生の手続きは、自己破産の手続き同様に煩雑であり、一般の個人が自ら行うのは不可能と考えて差し支えありません。弁護士や、司法書士に手続きを依頼するのが妥当です(費用負担は裁判所に対する支払いと、弁護士・司法書士に対する支払いとで、合計50万円程度が相場)。

 

個人民事再生の手続きを完全に丸投げしたい方は、司法書士よりは高額になる傾向ですが、弁護士に依頼してください。

 

個人民事再生(個人再生)のメリットとは?

それでは、以下に個人民事再生の主なメリット5つを整理しておきます。

  1. ・借金総額が5分の1程度に減額され、3年間、ないし5年間かけて分割返済ができるため、返済負担が大幅に減ること。
  2. ・自己破産とは異なり、原則として住宅や、ローン支払い終了後の自動車などの財産を処分したり、生命保険や学資保険などを解約したりする必要がないため、自身や家族の生活に与える影響が少ないこと(その代わり、住宅ローン返済金額の減免なし)。
  3. ・自己破産とは異なり、原則として借り入れ原因に問題があるという理由で、免責不許可とはならないこと。つまり、借金の原因がギャンブルや、浪費癖などであった場合でも、借金総額が減額されることになります。
  4. ・手続き開始後には、債権者は強制執行(給与の差し押さえなど)ができなくなるため、自身や家族の生活資金を確保できること。
  5. ・借金の保証人になってもらっていない限り、ご家族には迷惑がかからないこと。ご家族はブラックリストに載りません(金融機関が共有する信用情報に事故記録が付きません)から、ご家族名義のローンを組む際には悪影響が出ません。

 

個人民事再生(個人再生)のデメリットとは?

続いて、個人民事再生の主なデメリット5つもシッカリ押さえて置きましょう。

  1. ・自己破産とは異なり、借金を確実に返済し続けられる収入がないと、手続きを行えないこと。減額されるとは言え、借金の返済義務自体は残るためです(加えて、住宅ローン返済金額の減免なし)。原則、無職者は手続きできません。
  2. ・自己破産と同様、住所と氏名が官報に掲載され、公表されてしまうこと。一般人はまず見ないものですが、見られれば社会的に信用を失うリスクが高いです。
  3. ・自己破産と同様、ブラックリストに載るため、7年間前後は金融機関からの借り入れができなくなること。言わずもがな、新たにローンを組んだり、クレジットカードの発行を受けたりすることもできなくなります。
  4. ・自己破産と同様、保証人に借金を一括で返済するよう、債権者からの請求が行ってしまうこと。実態としては、債権者が分割払いに応じてくれるケースが多いです。個人民事再生の手続きをした主債務者と、保証人との双方が減額された借金を分割払いで返済することになりますが、保証人からの信頼は失うでしょう(一般の消費者金融からの借り入れや、クレジットカードでのキャッシングなどは、保証人契約はないことが普通)。
  5. ・勤務先からの借り入れがある場合、解雇される可能性があること。個人民事再生の仕組みにより、勤務先からの借金も減額されます。返済総額が減るので、勤務先に実質的な損害を与える結果になってしまうのです。

 

個人民事再生で借金が減額される仕組みは?

ここで、個人民事再生で借金が減額される仕組みを理解しておきましょう。提出した再生計画が裁判所に認められた後、実際に返済することになる減額後の金額は、元々の借金総額により以下のように設定されています(最低弁済基準)。

 

住宅ローンを除いた借金総額 返済することになる最低金額
100万円未満 全額(個人民事再生を使う意味なし)
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1500万円未満 借金総額の1/5
1500万円以上3000万円未満 300万円
3000万円以上5000万円まで 借金総額の1/10
5000万円超 個人民事再生による減額不可(対象外)

※所有権のある財産の合計金額が、この表にある返済することになる最低金額を上回っている場合、返済額は財産の合計金額とされることに注意(清算価値保障原則 )。

 

個人民事再生で実際に減額される借金はどれくらい?

実際に、個人民事再生で借金がどのくらい減額されるのか、具体例で見ておきましょう。シンプル化した3例ですが、グッとイメージが掴みやすくなるはずです。

 

【例1】借金総額が400万円で、都心部の官舎住まいで自家用車なしの国家公務員Aさんが個人民事再生の手続きをし、裁判所から提出した再生計画が認められたとしましょう。この場合、減額された返済すべき借金の総額は、最低で100万円となります。

 

【例2】自営業のBさんは借金総額が1300万円です。都心部の賃貸マンション住まいで住宅ローンはなしですが、現金で購入した高級ドイツ車時価800万円1台を所有しています。

再生計画が裁判所から認められた暁には、本来なら最低返済金額は借金総額の1/5、260万円ほどになるはずです。ところが、ローン支払いのない自家用車は自分名義になるため、所有財産と看做されます。


結果として、自家用車を処分する必要はありませんが、減額されても最低800万円程度は返済義務が残ることになります。

 

【例3】一部上場メーカー勤務のCさんは、実妹の事業資金借り入れの保証人になっていたため、住宅ローンを除く借金総額は2500万円となりました。

郊外に一戸建てマイホームを建て、住宅ローンを支払い中です。同じく、ローン支払い中の国産ワンボックスカー1台もあります。この場合、裁判所に再生計画が認められれば、借金は最も減額されて300万円にまで圧縮されます。


ただし、住宅は一定条件を満たせば処分しなくて良いので、住宅ローンの減額はなしです。自家用車に関しては、ローンを完済していないのでローン会社名義です。そこで、ローン支払い中に借金を減額する訳ですから、自動車はローン会社に引き上げられるのが原則です。

 

任意整理とはどんなもの?

任意整理ってどんなもの?
任意整理とは、債務者(実質的には依頼を受けた弁護士や司法書士)が債権者と、借金の返済方法(分割金額・期間)や返済金額(減額)について任意で交渉し、現実的に返済が可能な条件での合意を成立させる手続きになります。

 

消費者金融や、クレジットカードのキャッシングサービスなどでの借金や利息が嵩み、返済が苦しくなっているような場合、弁護士や司法書士に依頼して任意整理を行う方が多く見られます(費用負担は債権者1社当たり4万~5万円程度+減額報酬1割程度が相場)。

 

任意整理は自己破産や個人民事再生とは異なり、裁判所が関与しない債務整理の仕組み(当事者間の合意のみで成立)ですので、比較的ハードルが低い借金減額の仕組みとなります。このため、全ての債務整理方法の中で、最も頻繁に利用されています。

 

なお、任意整理の過程で行う利息制限法に則る金利の引き直し計算で、過払い金が発見されるケースも珍しくありません。その際、過払い金返還請求を行えば、借金をしているにも関わらず、お金が戻ってくることになります。

 

任意整理のメリットとは?

以下に、任意整理の主なメリット5つを整理してみましょう。

 

  1. ・将来金利が免除され、3~5年間にわたる分割返済が認められることが一般的なので、結果的に返済負担が大幅に減り、借金の完済が早まること。仮に、借金総額は減額できないとしても、生活の建て直しが可能です。
  2. ・ 利息制限法に則る金利の引き直し計算を実施した結果、過去に払い過ぎた利息分を借金の元本に充当可能ならば、借金総額を減額できること。2007年以前(グレーゾーン金利の無効判決が出る前 )の取引期間が長ければ、過払い金返還請求で返金される可能性もあります。
  3. ・裁判所が関与しない、自由度が高い借金減額の仕組みであり、債権者の一部だけを任意整理の対象とすることも可能なこと。例えば、住宅ローンの支払いとクレジットカードの支払いは継続し、消費者金融からの借金だけを任意整理するようなことも問題ありません。
  4. ・任意整理の手続き開始後、借金の返済は即時に一時停止が可能で、取り立ても停止できること。弁護士や司法書士からの受任通知書が債権者に到着する前に督促が来るケースもあり得ますが、任意整理を弁護士(司法書士)に依頼した旨を伝えれば、借金の取り立ては停止できます。
  5. ・官報にも載らず、ご家族を借金の保証人にしていない限り、ご家族に迷惑がかからないこと。ご家族はブラックリストに載りませんので、ご家族名義でのローン審査や、クレジットカードの発行審査には悪影響を及ぼしません。

 

任意整理のデメリットとは?

同時に、任意整理の主なデメリット5つも理解しておいてください。

  1. ・自己破産や個人民事再生に比べると、借金を減額する効果は低いこと(2007年以前の取引期間が長期にわたる場合を除く)。任意整理は、借金自体を減額するよりも、生活を壊すことなく借金を完済することが主目的と言えるでしょう。
  2. ・個人民事再生と同様、借金を確実に返済し続けられる安定した収入がないと、手続きを行えないこと。借金総額が減額されるとは限らず、返済義務自体は残るためです。従って、原則として無職者は任意整理を借金減額の仕組みとして使えません(非正規社員やアルバイトでも、安定した収入が期待できる場合は使用可)。
  3. ・自己破産や個人民事再生と同様、ブラックリストに載るため、5年間程度は金融機関からの借り入れができなくなること。この間、ローンを組んだり、クレジットカードの発行を受けたりすることも不可能です。それでも、自己破産や個人民事再生よりは、ブラックリストに載る期間は比較的短くなります。
  4. ・自己破産や個人民事再生と同様、保証人がいる債権を任意整理の対象にすれば、借金を一括で返済するよう、債権者からの請求が行ってしまうこと。実態としては、債権者が分割払いに応じてくれるケースが多いです。因みに、一般の消費者金融からの借り入れや、クレジットカードでのキャッシングなどは、保証人契約はないことが普通です。
  5. ・債権者との合意までに時間がかかったり、債権者が任意整理自体に応じてくれなかったりするケースが近年増えていること。特に、債権者が悪徳なサラ金業者などの場合、交渉が難航するケースは多いです。

 

任意整理で借金が減額になる仕組みは?

利息制限法の上限金利を上回る高金利(グレーゾーン金利)での消費者金融やクレジットカード会社などとの取引がある場合には、利息制限法に則る金利の引き直し計算を行い、過去に払い過ぎた利息分を借金の元本に充当し、まず借金の総額を減らします(グレーゾーン金利での取引がなければ、基本的に減額は厳しい)。

 

この利息制限法に則る金利計算での借金総額の減額後、将来の利息は免除して欲しいという交渉や、過払い金や実家の資金援助などで一括返済するから借金額を減額して欲しいという交渉を、債権者に対して実施してゆきます。

 

実際には、将来利息の免除は大多数のケースで合意できますが、一括返済との交換条件による借金額の減額は、必ずしも合意に至らないケースも少なくありません。任意整理の仕組みで減額された借金は、3~5年間程度かけて分割返済してゆくことになるのが一般的です。

 

因みに、利息制限法の上限金利を超える金利での取引は、概ね2007年以前のものです。従って、任意整理の仕組みを利用して借金総額が大幅に減額できるケースは、原則として2007年以前の取引が長くある場合がほとんど、と理解して差し支えありません。

 

任意整理で実際に減額される借金はどのくらい?

それでは、任意整理の仕組みを利用して可能な借金の減額は、実際問題どのくらいになるのでしょうか。結論から言えば、裁判所を介する自己破産や、個人民事再生のような客観的な借金減額の基準はありません。

 

任意整理の仕組みで減額可能な金額は、取引期間や取引態様によって様々であり、一概にどのくらいとは言えないのです。基本的な考え方としては、取引期間が長期にわたったり、取引金額が大きかったりすれば、一般的に減額度合いは大きくなります。他方、取引期間が短期であったり、取引金額が少なかったりすれば、減額度合いは小さくなる傾向だと言えます。

 

利息制限法の上限金利を上回る金利での取引が目立つ2007年以前からの借金があるか否か、ここも一つのポイントです。

 

【例1】ギャンブルが趣味の地方公務員Dさんは、2001年頃から消費者金融4社と取引があります。借金残高は4社合計で約300万円ですが、毎月の返済額が11万円ほどにもなり、生活を圧迫していました。

そこで、任意整理の仕組みを利用し、弁護士に消費者金融4社と交渉してもらいました。結果、過去に払い過ぎている金利分を借金の元本返済に充当し、借金残高を半額に近い160万円程度に減額することができました。加えて、将来の金利免除にも合意してもらえたので、160万円を3年間の分割払いで、毎月4万5千円ほどの返済で済むようになりました。

 

【例2】フリーランスSEのEさんは、2006年頃から収入が低い月の生活費の補填のため、時折クレジットカードのキャッシングサービスを使って今に至ります。

現時点での借金の残高は、2社で100万円ほどです。今回、親類から紹介された司法書士に依頼して任意整理の仕組みを利用しました。結果的には、借金額が比較的少なく、2007年以前のグレーゾーン金利での取引期間も僅かの間だったため、5万円ほどしか借金総額は減額されませんでした。


これでは、費用負担をして弁護士や司法書士に任意整理を依頼すると、却ってマイナスになってしまいます。唯一の救いは、将来金利を免除してもらえたことです。

 

【例3】アパレル系企業勤務のFさんは、ファッション関連の買い物が好きが高じ、2011年頃から信販会社5社に400万円ほどの借金があります。毎月の返済金額は15万円にもなり、実家から資金援助をしてもらわないと生活できないほどです。

友人のつてで紹介してもらった弁護士に任意整理を依頼しましたが、2007年以前のグレーゾーン金利での取引もないので、結果的に借金総額400万円は減額できませんでした。


それでも、信販会社5社と将来金利の免除と、6年間の長期にわたる分割返済について、合意を得ることができました。毎月の返済額は、これまでのおおよそ1/3の5万6千円程度にまで減額され、実家の資金援助を受けなくても生活できるようになりました。Fさんは、これまでほとんど遅滞もなく、毎月の返済だけはキチンと行っていたので、信販会社各社から合意を得やすい条件が幸いしました。

 

ちなみに、グレーゾーン金利とは?

グレーゾーン金利ってどんなもの?
最後ですが、任意整理の話題になると、「グレーゾーン金利」という言葉を頻繁に耳にすることになります。ところが、これを正しく理解している方は、意外に少ないものです。

 

実際、過去には利息制限法の金利上限(借金の金額により年15~20%)と、出資法の金利上限(年29.2%)との間にギャップが存在しました。利息制限法の利率上限を超えても、出資法の利率上限を超えない限り、法的に罰せられることはなかったので、ほとんどの消費者金融会社や信販会社、クレジットカード会社などは、かつて利息制限法以上、出資法未満の利息帯で貸し出しを行っていたのです。

 

この高金利の利息帯が、所謂グレーゾーン金利と呼ばれるものです。

 

かつてのグレーゾーン金利での取引実態(2007年頃より以前)

出資法の金利上限(年29.2%)超 無効(刑罰あり)
グレーゾーン金利(利息制限法の金利上限超、出資法の金利上限まで)での取引 一定条件を満たせば有効(刑罰なし)【過払い金が発生する状態】
利息制限法による金利上限(10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%)まで 有効(刑罰なし)

 

ところが、2006年の最高裁判決では、とうとうグレーゾーン金利における利息支払いを原則無効と判断し、グレーゾーン金利で支払った利息(過払い金)については、過払い金請求により返還を受けられることになりました。これを受け、大手の金融機関では、翌年2007年頃からグレーゾーン金利での貸し出しを中止しました。

 

つまり、2007年頃以前のグレーゾーン金利での取引実態がなければ、債務整理で利息制限法に則る金利の引き直し計算を行えず、借金が減額されることもない、ということを意味しています。

 

まとめ

借金減額の仕組みまとめ
言わずもがな、自己破産は究極の借金減額(借金棒引き)の仕組みですが、失うものも非常に大きいものです。ご家族や関係者に与える影響も甚大で、簡単に考えられるものではありません。そこに至る前に、任意整理や個人民事再生があります。

 

それぞれ、メリット・デメリットがあり、個人個人の条件によってどちらの借金減額の仕組みを採るべきかは一概に言えません。いずれにせよ、一人だけで使えるような仕組みではありませんから、経験値の高い弁護士や司法書士の意見も聞きつつ、冷静に決断しましょう。

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